建物の劣化
建物の劣化とは、経年や自然環境、使用状況、そして施工の質などさまざまな要因によって、建物の構造や外観が徐々に損なわれていく現象です。
これは住宅やマンション、商業ビルといったあらゆる建物に共通して起こるもので、放置すると建物の寿命を縮めるだけでなく、住環境や安全性にも大きな影響を与えることになります。
特に、初期段階の劣化は見た目では気づきにくいケースも多く、気づいたときには内部まで深刻なダメージが進行していることも珍しくありません。
劣化を早期に発見し、適切な対処をすることで、建物の耐用年数を延ばし、大規模な修繕や高額な費用の発生を抑えることが可能です。
代表的な劣化の種類
1.クラック
コンクリートやモルタルの乾燥・収縮叉は地震などによる挙動の為、経年をへた躯体には大小のひび割れ(クラック)が生じます。ひび割れに雨水や炭酸カガスが浸入するとコンクリートは中性化が進み、内部の鉄筋を腐食膨張させて爆裂や欠損を促進させる要因となります。
また、バルコニーや開放廊下床面に生じたクラックは放置すると貫通してしまい、雨水が浸入した結果天井や軒天にエフロレッセンス(白化現象)が生じ、大きく美観を損ねるだけではなく鉄筋の腐食を生じて躯体へダメージを与えます。
2.モルタル浮き
現在のコンクリート打ち放し工法では型枠の精度もよく、不陸調整の為の厚いモルタル塗り仕上げが有りませんが、実際には寸法を調整したりする為薄いモルタルが塗ってあり、部分的に浮きが発生します。また、バルコニーや開放廊下の床面・RC階段の踊場などにもモルタルが薄塗りされている為、経年の劣化により浮きが生じやすくなります。
また、手摺壁の天端もモルタルで成型されている事が多く、浮きが発生して天井や軒天と同様に落下の可能性もでてきます。
3.鉄筋爆裂
コンクリートの外壁は2.0cmの被り厚さ(鉄筋から外壁面まで距離)が義務付けられ、炭酸ガスや雨水の進入によるコンクリートの中性化を防止していますが、場合によっては被り厚さが不足しているケースが見受けられます。
多くの原因は竣工時の型枠の精度が不足していたり、施工不良によって規定の厚さが保たれていない事に有ります。 その結果コンクリートの中性化が進行し、鉄筋が腐食して膨張した結果爆裂に至ります。爆裂は一般外壁の他にバルコニーや開放廊下にも見られ、庇や軒天には特に発生しやい現象です。
4.欠損
欠損はひび割れや爆裂によっても生じますが、躯体の挙動によるモルタル破壊や、寒暖の差による鉄とコンクリートの伸縮係数の違いによっても発生します。例えば鉄骨階段梁の取合いヶ所や、手摺壁スチール手摺取合いヶ所の欠損が代表的な例です。
下地補修の一般的な工法
ひび割れ部
■シール擦り込み工法(0.3mm未満)
■エポキシ樹脂注入工法
(0.3mm以上~1.0mm未満)
■Uカットシール充填工法(1.0mm以上)
モルタル浮き部
■アンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法
爆裂・欠損部
■モルタル充填工法
ひび割れ部
シール擦り込み工法
(クラック幅 0.3mm未満)
0.3mm以下のクラック幅の場合には注入が出来ない為、直接弾力性の有るシール材などを擦り込んで押えます。
Uカットシール充填工法
(クラック幅 1.0mm以上)
躯体に生じたひび割れには、大きく分けて、コンクリート自体の収縮により生じたものと、建物の構造上の理由から生じたものとがあります。 前者の場合、挙動(割れが広がったり縮まったりしようとする動き)の無いものが多く、割れ内部に セメント材等を充填して修復を 行います。
それに対して後者の場合、挙動があり、今後も割れが大き くなる可能性があるため、 Uカットシーリング工法を多く用います。この工法では、割れ部分に溝を作ってシーリング材を充填することで、割れが広がろうとする動きにシーリング材がついていきます。
エポキシ樹脂低圧注入工法
(クラック幅 0.3mm以上 1.0mm未満)
幅0.3mm以上のクラックに対して行う工法で、クラック周囲が粗面であればケレンなど清掃し、注入器具を現状に応じたピッチで取付け、注入器具間のひび割れをシール材等で被覆し、無機系又はエポキシ樹脂を注入器具より注入し、クラック内部まで充填する工法です。
モルタル浮き部
アンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法
この工法は、浮いているモルタルにコンクリートドリルで穴をあけ、エポキシ樹脂を注入します。
その後ステンレス製のアンカーピン(ステンレスピン)を挿入し、補修用モルタル(樹脂モルタル等)で穴を埋め戻し、表面が目立たないよう仕上げ処理を行う工法です。
エポキシ樹脂とアンカーピンを併用して、躯体コンクリートと浮いてしまったモルタルを接着します。
爆裂・欠損部
モルタル充填工法
コンクリートの剝がれ、剥落のため鉄筋が露出している時に使用される工法です。 鉄筋の欠損部や鉄筋が腐食している周辺箇所のコンクリートを削り落として鉄筋を露出させます。 鉄筋についた錆をワイヤブラシなどで取り除き、防錆処理した後にエポキシ樹脂モルタルで補修します。
磁器タイルの劣化・損傷
タイルが浮き上がり危険な状態
剥離・落下の可能性
下地・モルタル面の損傷
躯体・下地モルタル層の爆裂
磁器タイル浮きの発生について
コンクリート躯体とタイル張り仕上げなどの仕上げ層との隙間(浮き)を発生させる原因は次の通りです。浮きは外壁の剥落に繋がる危険度の高い要因です。
①温度差によるムーブメント
日射を受ける事によって仕上げ層は熱膨張が生じ、夜間は逆に躯体より先に収縮する事のくり返しにより付着力が低下します。また、磁器タイルとコンクリートの熱による伸縮係数の違いも生じ、モルタルと磁器タイルの間には隙間が生じやすくなります。
②地震などの外力によるムーブメント
建物の変形、揺れ、歪みの発生に伴うコンクリート躯体と仕上げ層との付着力が低下します。
③湿度によるムーブメント
磁器タイル目地などからの吸水により膨張が生じ、乾燥する事によって収縮するこのくり返しにより付着力が低下します。
④凍結融解によるムーブメント
ひび割れ部から進入した湿気が凍結(膨張)・融解(収縮)を繰り返す事により付着力が低下します。
⑤鉄筋の被り厚さ不足
鉄筋の被り厚さ不足により鉄筋に錆が発生し、膨張する事によってコンクリート躯体と仕上げ層を押出して浮きを発生させます。
⑥施工不良叉は建物の不同沈下
コンクリート躯体のジャンカ・異物の混入・過度の深目地なども付着力を低下させる要因となり、また、建物の不同沈下によって外力が発生し同様な浮きが生じます。
磁器タイルのひび割れ・欠損の発生について
タイル張り仕上げのひび割れ現象は、発生要因によってより微細なひび割れから貫通するようなひび割れなどが有ります。そのひび割れにより雨水が浸入して漏水したり、鉄筋などを腐食させ錆汁が流出している等の現象が見られます。
また、タイル仕上げの欠損は、タイル陶片、タイルの張り付けモルタルと下地モルタル間、タイルの下地モルタルとコンクリート界面等欠損の他に鉄筋や手摺等の埋設部分が腐食膨張により押出され、その部分が欠損して浮き・剥落等の現象が見られます。
細かくひびが入り危険な状態
剥離・落下の可能性